この愛、早く喰べないと
とけちゃうよ!
一緒にいることによって、離れているより難かしい。
ふたりでいなくったって気持ちくらい伝えられる。でも、いつも一緒にいればもっと君のことを好きになる。そうなっちゃったらこの気持どうすればいいんだろ…「好きです」
今、大阪で大ブームの街、新世界。
休日などは、若者や観光客でごった返し、名物の串かつ屋などは何時間も並ばないと食べられないほど。通天閣も入場制限されたりして、昭和ブームの後押しからか、今やトレンディーなデートスポットになっています。その変わりようは、まさに驚きです。
さてこの映画『アイスクリームのかほり』は、そんな新世界が舞台です。が、時代はちょっと遡って、まだこの街が、労働者の街やドヤ街などと呼ばれていた頃、つまりディープな下町だった頃のお話です。
もうすぐ30歳になる青年。一流の商社に入って、彼女もいてと、側から見ると順風なサラリーマン生活を送っているはずなんですが、どうも最近、これは俺の人生じゃないと感じ始めていて、彼女とも上手くいかなくなり、仕事もやる気が起こらない。いつのまにかダメ社員になっていたのです。
そんなある日、左遷気味の営業先の配置換えがあり、彼は新世界へと向います。この町は、昔子供の頃に一時住んでいたことがあるのですが、何故かそのときの記憶だけがポツンと抜けているのです。何かがあったことだけは分かるのですが、それが何だったか思い出せない…。が、その町に入ったとたん、次々と記憶が蘇ってきたのです。そして、大好きだった、アイスクリーム屋のおじさんのことも。
大好きだった…、大好きだった…、なんだろう、この感情は…。
そんな自分に戸惑う彼の前に、そのアイスクリーム屋のおじさんが現れたのです。何という再会なのか。その瞬間から、彼の人生は大きく変わり始めていって…。
一人の青年がゲイに目覚め、ほんとうの自分を取り戻していく過程を、丁寧に、そしてエロスと感情のバランス感覚を見事に描き、公開当時、現代詩の雑誌『ユリイカ』で絶賛された名作の久々の公開です。
街のかほり、そして人肌のかほりが、スクリーンから漂ってくる、エッチで胸キュンな映画。新世界ロケもいい感じで、懐かしさも味わえますよ。